ポンコツ金融ウーマンの本棚。

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ブックレビュー(5)『NO HARD WORK! 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』ー穏やかに働き続けるために、できること。

3月も半ば。残業の日々が続き、せわしなく仕事に追われ、「早くこの状況から解放されたい!」と思っている方も多いかもしれない。

 

今日ご紹介する本は、そんな思いを抱えている人にはうってつけかもしれない。世界的なソフトウェア開発会社、「ベースキャンプ」の経営者による仕事論が紹介されている。仕事論の本は数多く出版されているが、本書、つまり著者の会社の面白いところは、大抵の会社は選ばない選択肢をあえて取りにいく点だ。「多くの会社がそうしているから自分達もそうする」ではなく、仕事というものに真摯に向き合い、「こうした方が良い」という答えを選び取っているように感じられた。

 

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『NO HARD WORK! 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』ジェイソン・フリード/デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン(早川書房



本書では、「穏やか(カーム)」がキーワードとなっている。「クレイジー」(ここでは著者は、クレイジーという言葉について人の状態ではなく状況のことを指している)に働くことをやめ、「穏やか(カーム)」に働こう、そして結果を出そう、と説いている。

 

「がんばりすぎる」のをやめよう

人々が「クレイジー」な状況に置かれてしまう原因の一つに、成功するための並々ならぬ努力を信奉するメッセージが世間に溢れすぎていることが挙げられるかもしれない。

 

苦しみながらも仕事をし続け、頑張る。でも大半の人はその努力が報われずに、疲れ果て、燃え尽きてしまう。時には身体も壊してしまう。しかし、人間の経験はいつでも限界まで頑張る以上の価値があり、おまけに14時間以上働くと創造性や面白いアイデアが浮かぶ妨げとなるから、「がんばれ」と言うのは助言としても不適切なのだ、と著者は言う。

 

だからこそ「穏やか(カーム)」に働こう

 

毎日きちんと働いても、長時間働きすぎない。自分の身体を大切にしていいし、ゆっくり映画を見たっていい。時にはちゃんとした料理を作ってもいいし、散歩に出かけるのだっていい。著者は、時々まったく普通の人になっても十分成功は出来るのだと主張している。

 

穏やか(カーム)な働き方に近づけることは、私たちの働き方はもちろん、自分の時間の使い方を見直す有効な手段ともなる。

 

ここで、「カーム」についてご紹介しよう。

 

カームとは、人びとの時間と集中力を守ること。

カームとは、一週間あたりの労働時間を約四〇時間におさめること。

カームとは、現実的な見込みを立てること。

カームとは、充分な休日があること。

カームは、比較的小さい。

カームは、くっきりみえる境界線。

カームは、会議を最後の手段とする。

カームは、まずはメールなどの受動的なコミュニケーション・ツールで、その次にリアルタイムでコミュニケーションを取ること。

カームとは、みんなが独立していて、相互依存が少ないこと。

カームとは、息の長い持続可能な営み。

カームは、採算性が高い。

                              (p. 19)

 

 

本書では、この「カーム」の概念に基づき、様々な仕事論が紹介されている。事業の手を広げすぎずに、持続でき、かつ制御可能なサイズを維持すること(拡大しないということではなく、全体を見ながら成長を試みる)、 未完の仕事の途中で別の仕事に取り掛からず、一つ一つ取り組んでいくことなど。「人生100年時代」と言われるようになって久しいが、私たちが長く穏やかに働き続けるためのヒントが満載だ。これから新年度を迎えるにあたり、自分の働き方を改めて考えるのにおすすめの一冊である。